がんの手術療法の特徴、治療効果、問題点を解説します

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がんの3大治療と免疫療法の関係

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Method 1

がんの手術療法 Surgery

塊を形成するがんの「第一選択肢」となるのが手術

手術療法(イメージ)

がんが一箇所または複数個所に「塊」をなしているとき、一番目に検討されるのが手術です。手術は、がん組織の拡大を直接的に防ぐことと、転移を防ぐという意味でとても重要です。胃がんや肺がん、子宮がん、肝臓がんなど、手術で除去が可能と判断されるがんが対象です。とはいえ、臓器の機能を失ってしまわない程度・範囲で実行する必要がありますので、やはり早期のがんに対して行われることが多い治療法ではあります。がん組織を取ってしまえれば完治の可能性も見えてきます。そのためにも、早期発見は大切なものです。

手術といっても、「開腹手術」「レーザー切除」「マイクロサージェリー」「内視鏡手術」「腹腔鏡手術」などいくつかの方法があり、がんの場所やサイズを勘案して最適なものが選ばれます。どんな場所のがんであろうと、手術を最小限のダメージで抑えるためにはやはり早期発見が大前提。手術の規模や入院日数を抑えることができれば、身体にも優しいだけでなく、治療費も圧縮できることになります。

なお、白血病などの血液のがんの場合、麻酔や考えうる手術術式に患者が耐えられないと判断されたときは、抗がん剤や放射線治療といった他の治療法を検討します。

がんの手術費用は、状態や術式によって変わるため、一概には言えませんが、例えば胃がんの場合、内視鏡手術で胃粘膜部分を切除するような手術の場合は30万円程度、胃の一部を切除するようなケースでは130万円程度です。これらの金額を1割負担もしくは3割負担することになります。条件に合致すれば高額医療費制度の対象となり、負担額を抑えることができます。

アイコン がん手術の種類

手術療法には、その場所や目的によって様々な種類が存在します。すべて、患者の状態を優先して決定されます。

根治手術と姑息手術

  • 根治手術(治癒手術)

    がん組織の塊がごくごく小さく、がんを取りきれると判断したときに行われるのが根治手術(治癒手術)です。悪いところを取り切ることから、根治(完治)と表現し、「きれいに取れました」といった表現がなされるときは、根治手術です。がん組織の周辺の臓器を切除することもありますが、これは合併切除と呼ばれています。合併切除は、健康な組織であってもがん組織と触れていることで癒着していたり、がんが波及していると考えられたりするときに採用され、がんの広がりを抑えることを目的とします。
    ただし、根治手術であっても、抗がん剤を併用し、血液にのって飛び火しているかもしれないがん細胞による再発を抑制する治療を行うこともあります。

  • 姑息手術(絶対非治癒手術)

    同じ手術でも、根治手術と対を成すのが姑息手術(絶対非治癒手術)です。がんの塊を完全に取り切れないとわかってはいても、手術をせざるを得ないことがあります。がん組織がこれ以上拡大すれば、臓器を圧迫してその働きが顕著に低下してしまうことが想定されるときなどです。
    がんの完治を目指すものではないこと、その名前(姑息手術)から良いイメージがないかもしれませんが、生命を維持することと患者の苦痛を軽減する意味ではとても大切な方法のひとつです。取り残したがんがあったとしても、抗がん剤や放射線治療と同時に行い、治療していこうというのが姑息手術(絶対非治癒手術)の基本スタンス。他の治療法を用いるときも、そもそものがん細胞の量が少なければ効果が高まります。姑息手術はその意味でも大切な治療法のひとつです。

手術のやり方の違い

  • 開腹手術

    その名の通り、腹部を切開してがんのある部分にアプローチする手術法です。全身麻酔下で行われ、皮膚、脂肪、筋肉、腹膜の順で切り開いていきます。そしてがんのある部分に到達したら、がん組織を取り去り、縫合します。手術時間はがんの部位やがんの広がり方により異なります。たとえば転移の認められない大腸がんであれば、準備や麻酔の時間を加えて4~5時間です。手術が終了し病室に戻ってから退院まで、10日から14日ほどかかります。

  • 内視鏡手術

    ファイバースコープと呼ばれるカメラつきの管を口・食道から通し、胃の内部にアプローチする方法です。胃の内部に届いたら、カメラの画像を見ながら、胃の内部に発生したがん部分を切除します。開腹手術ではありませんから、おなかに傷が残らない、回復までの時間が短くて済むというメリットがあります。しかしながら、胃の内部という限られた部分にしか届かない手術ですから、ごくごく限られた状況下でしか行われません。

  • 腹腔鏡手術

    腹腔鏡手術は、おなかにいくつかの穴を開け、そこからカメラや鉗子などを挿入してがん化した部分を切除する方法です。開腹するかしないかの違いだけで、実際に行うことは同じですが、傷の治りが早いのが特徴です。直接的なアプローチである開腹手術とは違い、かなり狭いスペースで手術を行わなければなりませんので、医師の技術が必要です。がんの状態や患者の体質によって、腹腔鏡手術から開腹手術に切り替えなければならないこともあります。

切り取る範囲の違い

  • 縮小手術

    初期のがんの場合、切除しなければならない範囲が最小限ですみます。このようなとき、本当に切除しなければならない部分だけを取り去る縮小手術を採用します。臓器の機能を著しく損なうまでの切除を必要としないため、手術後の回復が早いというメリットがあります。しかしながら、がん部分を最小限切除でとどめようとするならば、手術前の検査で取り去るべき範囲を正確に把握しておくことが必要です。

  • 定型手術

    定型手術とは、その名の通りこれまで標準的に行われてきた手術方法を指します。主に胃がん手術で用いられてきたものを指し、「胃の3分の2以上の切除」「リンパ節の郭清(がんの周辺にあるリンパ節を切除すること)」を同時に行います。リンパ節への転移が認められる早期胃がんを中心に採用される手術の方法です。定型手術に対し、非定型手術とは、前述の縮小手術と後述の拡大手術を指します。

  • 拡大手術

    進行性のがんの場合、がん部分を取り去るだけでは間に合わないことがあります。このようなときは、がんが転移するであろう部分にまで切除の範囲を広げます。胃がんであれば膵臓・脾臓・大腸・肝臓などの一部を切除の対象とします。これを拡大手術と呼びます。手術そのもの、また手術後の身体的負担が大きくなることから、がんは早期発見が何より大切であることが理解できます。

QOL(生活の質)を高めるために

  • 機能温存手術

    臓器はそれぞれ人体を支える重要な役割を持っています。極力切除範囲を狭めることで、その機能を阻害しないようにすることができます。これを狙ったものを機能温存手術と呼びます。ですが、手術の範囲を過不足なく決めるのはとても難しいことです。機能温存に軸足を置くとがん細胞が飛び火しやすく再発の可能性が高まりますし、再発を防ぐ目的で多く切除してしまえば患者が自力で生活することを難しくしてしまいます。医師と患者の間でインフォームドコンセントを正しく実行し、患者の希望・考え方を取り入れた手術(または併用する他の治療法)を決めます。機能温存手術の代表例は、喉頭がんにおける喉頭部分切除、直腸がんにおける自然肛門温存などです。

  • 再建手術

    手術で取り去った部分の機能を代替するため、器官を作り直すことを再建手術といいます。特に重要なのは、生命を支える器官を再建することです。舌がんの手術で広範囲にわたって舌を切除すれば、食物を飲み込んだり発声したりすることができなくなりますが、これを解消するために腕や腹部の筋肉を採取して、失った舌の部分に移植することがあります。食道がんならば、食物や飲み物の通り道を確保するために、小腸を一部採取して失った食道部分に移植します。また、乳がんで乳房を失ったのであれば、おなかの皮膚や脂肪を失った乳房部分に移植して再建するといった術式があります。

アイコン 手術でがんを取り除く問題点

手術療法は、がん化した部分を取り去るという効果で、全ての治療法の中で第一に検討される治療法です。目に見える(画像で確認できる)がんを切除できれば第一段階の成功とはいえますが、いくつかの問題点も抱えています。

  • ・手術の跡(キズ)と全身状態の回復に時間を要する

    ・点々と飛び火したがんには対応できない

    ・臓器を切り取ってしまうことから生じる臓器機能の低下や消失

    ・手術ができない場所もある

    ・手術をしても必ず治るという保証はなく、その効果には差がある

このなかでも最大の問題は、臓器の機能を一部失ってしまうことです。これは患者のその後に大きな影を落とします。体調不良や生活の質の低下は苦痛以外の何物でもありません。命を長らえるためとはいえ、元通りの生活ができないことはQOLの観点からも望ましくありません。

手術療法に加えて考慮すべき
第4のがん治療「免疫療法」

早期がんにおいて、がんの塊をきれいに取り切れるならば手術療法も大きな力となってくれます。しかしながら進行がんなどで切除範囲が広くなればなるほど、身体への負担は大きくなります。手術療法は治療方法の第一候補ではあっても、完全なものではありません。抗がん剤や放射線治療と併せて「3大治療法」として実施することが一般的なのです。

この3大治療はお互いを補い合う関係ですが、近年これに加え「第4の治療」として免疫療法が注目されています。従来のがん治療には弱点もあります。これを補うために自分自身の免疫力を増強させて、がんの治療を加速し、QOLの向上を目指そうとする考えに共感する方が増えています。

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