症状があらわれにくく気づいたときには治療も難しい最恐のがん
すい臓は、食物を十二指腸で消化吸収するときに必要な膵液(すいえき)を分泌する消化器のひとつ。すい臓がんは自覚症状に乏しく、肝臓に転移しやすい性質をもちます。肝臓もまた「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状があらわれにくい臓器で、気づいたときにはがんが進行していたということも少なくありません。
画像引用元:日比谷内幸町クリニックHP(http://www.hu-clinic.com/case/case_20.html) 余命2年を乗り越え仕事に復帰―【原発箇所不明、肝臓にも転移】食欲不振や背中の痛みで検査、すい臓と肝臓にがんを確認。手術も放射線治療もできず、抗がん剤とともに免疫療法を行う。肝臓と肺のがんは縮小。
画像引用元:日比谷内幸町クリニックHP(http://www.hu-clinic.com/case/case_03.html) 50代での職場復帰―【肝臓と肺へ転移】すい臓がんが原因で肝臓や肺へ転移。抗がん剤治療のみの治療に不安を覚え免疫療法を併用。約半年で転移したがんはほぼ消失し、すい臓がんも縮小。
高齢の進行すい臓がん―【脾臓・結腸にまで転移】すい臓がんと診断され病変組織を切除、胃壁・結腸・脾臓にまで及んだがんはステージⅣb期。抗がん剤は受けずに免疫細胞療法で再発防止。
人間ドッグで腫瘍発見―【手術ののち肝臓に転移】抗がん剤を使用しても効果がなくさらに進行。ホスピスを勧められたが、他に方法はないかと免疫療法を受けたところ、6ヶ月でほぼ消失。
インスリン治療中―【肝臓転移は消失】インスリン治療中に腫瘍マーカー上昇、すい臓がんと診断。手術の後抗がん剤を使用するも肝臓へ転移。免疫細胞療法へ切り替えて8年、肝臓がんは消失。
すい臓がんの治療においては、多くの病院・クリニックで免疫治療が実施されています。
免疫治療には、大きく分けてアクセル型(免疫力を高める治療法)とブレーキ型(免疫のブレーキを外す治療法)の2種類がありますが、すい臓がんの治療において行われる免疫治療は、アクセル型が中心です。
いくつかあるアクセル型の免疫治療の中でも、特にすい臓がんでは「樹状細胞がんワクチン」「NK細胞療法」「活性化リンパ球療法」の3種類の方法が多く採用されています。
樹状細胞の活性化を利用した免疫療法。樹状細胞とは、外部から体内に侵入した異物の特徴を判定し、その情報を攻撃細胞に伝える働きを持ちます。
NK細胞の活性化を利用した免疫療法。NK細胞とは、外部から体内に侵入した異物を真っ先に攻撃する役割を持ちます。
主にT細胞の活性化を利用した免疫療法。リンパ球とは、外部から体内に侵入した異物を攻撃する細胞の総称です(T細胞、NK細胞、B細胞)。
以上の免疫療法のうち、すい臓がんには「樹状細胞がんワクチン」が特に有効であることが、国内外の研究機関から報告されています。慶応大学医学部や慈恵医大などでも、現在、すい臓がんに対する「樹状細胞がんワクチン」の臨床試験が行われています。
これらの免疫療法は、他の標準的ながん治療と並行して行われることで、より高い効果をもたらすと考えられています。
すい臓がんにおいて最初に検討される治療法は、手術です。手術を経た1年生存率は62%。一方で、抗がん剤と放射線の併用による1年生存率は32%。すい臓がん治療における手術の有効性が高いことが分かります。
手術が不適応である場合には、放射線治療が検討されます。ただし放射線治療が単独で行われることは少なく、一般的には抗がん剤との併用で治療を進めることになります。
すい臓がん治療においてよく使われる抗がん剤は、ジェムザールとTS-1。いずれも、すい臓がんを完治を目指す薬ではなく、進行を遅らせるための薬です。すい臓がんに使用される抗がん剤の副作用について詳しく知りたい方は、膵臓がんの抗がん剤治療|薬剤の種類と効果・副作用をチェックしてみてください。
なお、いずれの治療法においても、免疫療法を並行することによって治療効果が上がるとの報告があります。
ところで「日当たりの悪い地域の人々は、すい臓がんの発症リスクが高くなる」との研究報告(カリフォルニア大学サンディエゴ校)があります。日光を浴びないと体内でビタミンDが欠乏しますが、このビタミンD欠乏症がすい臓がんの原因の一つではないか、という学説です。
これを根拠に、すい臓がんの予防・改善のためにはビタミンDの補給が重要と唱える人もいます。