がん細胞は、とても巧妙に免疫細胞の攻撃をかわそうとしています。がん細胞を強力な殺傷能力で攻撃する細胞傷害性T細胞(CTL)に手出しされないよう、がん細胞は、このCTLの活動力を抑えてしまう免疫チェックポイントという仕組みを持っています。
この仕組みを発動できないようにすれば、再度、CTLががん細胞を攻撃できるようになります。がん細胞の持つ免疫チェックポイントという仕組みをストップさせるのが「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる物質です。
CTL細胞が表面に持つPD-1という分子は、がん細胞の出すPD-L1という物質と結びつきやすい性質をもっています。これらの物質の働きによって、免疫細胞とがん細胞とが合体してしまうと、その瞬間から免疫細胞はがん細胞を攻撃できなくなってしまうのです。この、免疫細胞とがん細胞が結びつきやすい性質を阻害するのが「抗PD-1抗体(オプジーボ)」です。
がん細胞が体内に現れると、樹状細胞のB7と細胞傷害性T細胞(CTL)のCD28が結合してCTLA-4を作ります。CTLの表面のCTLA-4はCTLを活性化させる働きがあり、がん細胞を攻撃するようになります。このCTLA-4がB7と結合してしまうと、どういうわけかCTLはがん細胞を攻撃しなくなります。この場合は、CTLA-4とB7が結びつくのを阻害すると、CTLがもともとの働きを取り戻すことがわかっています。このために使用するのが「抗CTLA-4抗体」です。
がん細胞を殺傷するよう準備を整えたCTLの表面には、PD-1と呼ばれる分子が存在します。がん細胞にはそのCTLの動きを封じるためのPD-L1という物質が結びついています。CTLのPD-1と、がん細胞側のPD-L1が合わさると、CTLの動きは抑制されてしまいます。PD-1には抗PD-1を、PD-L1には抗PD-L1を結合させてしまえば、CTLの攻撃行動は再度開始され、がん細胞を破砕しはじめます。
がん細胞は、敵の攻撃をかわし、自分自身を守ろうとする仕組みをもっています。これは、「がん免疫逃避機構」と呼ばれていて、がんの巧妙さをうかがい知ることができるものです。免疫を抑制しようとする、このようながん細胞の動きを止めようとする治療法が開発され、注目され始めています。
●がん免疫逃避機構とは がん細胞は、自らを守ろうとする仕組みを持っており、これを「がん免疫逃避機構」と呼びます。このがん免疫逃避機構は、免疫細胞の正常な動きを止めてしまい、がん細胞の増殖を引き起こします。
免疫細胞の司令塔とも呼ばれる樹状細胞ががん細胞と出会うと、T細胞にがんの目印を伝え、同時に「攻撃しろ」という指示を出します。その指示と手配書を受けたT細胞は、攻撃すべきがん細胞を探し出し殺傷に入ります。この攻撃をかわすため、がん細胞はT細胞と結びつき、攻撃をやめるようサインを出すのです。
その結びつきは実に見事で、まるでパズルのピースのようにがっちりと合うのです。がん細胞と切っても切れないような状態となったT細胞は、「攻撃するな」のシグナルを受け取ることになり、がん細胞とT細胞の結合が成立し続ければ、がん細胞は攻撃を受けずに済むことになります。
●がん免疫逃避機構のメカニズム 今、研究が進んでいるのは、「PD-1/PD-L1経路」といわれるものです。がん細胞が発している物質である「PD-L1(programmed cell death-1 ligand-1)」と、T細胞のもつPD-L1受容体である「PD-1(programmedcell death-1)」は、がっちりと握手をするような吸引力により結びつくものです。
PD-L1とPD-1がぴたっと結合してしまうと、がん細胞が免疫細胞にブレーキをかけ、攻撃状態に入ったT細胞の動きを止めてしまいます。逆に言えば、PD-L1とPD-1の結びつきを回避することができれば、がん免疫逃避機構は働かなくなるのです。
免疫チェックポイント阻害療法とは、上にご説明した「がん免疫逃避機構」で、結びつくはずのがん細胞と免疫細胞を近づかないようにするものです。結びつきを阻害することで、免疫細胞に本来の働きをさせること、免疫細胞が再度活性化するように仕向けるものです。
●治療の流れ 免疫チェックポイント阻害剤のひとつ「抗PD-1抗体(オプジーボ)」の治療は、がんの種類や患者の治療暦などにより決定されます。一例を紹介します。
●悪性黒色腫 14日に1度オプジーボ静脈に点滴、1時間以上で投与します。14日に1度を1サイクルとし、静脈点滴を続けます。
●悪性黒色腫(抗がん剤治療などを受けたことのある患者) 21日に1度オプジーボを静脈に点滴、1時間以上で投与します。21日に1度を1サイクルとし、静脈点滴を続けます。
●非小細胞肺がん 14日に1度オプジーボを静脈に点滴、1時間以上で投与します。14日に1度を1サイクルとし、静脈点滴を続けます。
●効果効能 免疫チェックポイント阻害剤は、これまでに三大治療法(手術・抗がん剤・放射線治療)で効果が見られなかった患者のうち、2~4割に一定の効果があることがわかってきました。たとえば、ホジキンリンパ腫では9割の患者に何らかの効果があったとの結果もあります。また、肺がんや腎臓がん、メラノーマでは2~4割の患者に一定の効果がありました。
一例として、ステージ4・進行がん(大腸がん)の22歳の方は、2回の手術と抗がん剤による治療を受けても効果はなく、「出来ることは何でもしよう」との思いで、免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験に参加しました。結果、がんが60%近く縮小し、1年後には外出できるまでになりました。
また別の方の例としては、肺がんが全身に転移してしまい、「余命数ヶ月」との診断があった後、抗がん剤の効果はなかったものの、免疫チェックポイント阻害剤の臨床試験に参加したことで、1年半後には肺がんが見えなくなってしまったといいます。
三大治療法その他の治療法を試してもなお効果がなかった患者に対しての治療効果ですから、がん患者にとって悲願の薬といっても過言ではないでしょう。
なお、チェックポイント阻害剤の種類や効果、副作用について詳しく知りたい方は、下記のページもチェックしてみてください。
山手CAクリニックでは樹状細胞ワクチンと免疫チェックポイント阻害剤を組み合わせた「がん特異的複合免疫療法」を実施。体内で発生したがん細胞の特徴をリンパ球に伝えながら、免疫相貌とがん細胞の結びつきを防ぎ、多方面から自己の免疫機能に働きかけをしてがんに対抗する治療法です。 他院で受けている持病や処方薬も分析するなど、ひとりひとりの状態に合わせた個別化医療を提供。初回相談は無料なので、現在受けている治療や告知されている方針が自分に合っているか相談してみるのはいかがでしょうか。
自家がんワクチン・活性化リンパ球療法・樹状細胞療法・NK細胞療法などの免疫細胞療法、免疫細胞の働きをサポートするとされるアルファリポ酸・高濃度ビタミンC・濃厚まいたけエキスなどのサプリメント、超音波治療・電場療法・光+超音波ダイナミック療法・オゾン療法など、あらゆる角度の治療法を提供。 がんの状態や患者さんの体質、治療への希望など、条件にあった治療を提案できるのが乾がん免疫クリニックの特徴です。これだけの備えがあるのは「がん組織を破壊し、免疫力をあげることでがんを攻撃しよう」というのがコンセプト。