免疫システムを構成する免疫細胞の種類と具体的な仕組み

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がんの3大治療と免疫療法の関係

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わたしたちの体と免疫の関係(イメージ)

わたしたちの体と免疫の関係(イメージ) わたし達の体の中にある
免疫の仕組み

免疫は病原菌や異常な細胞から
体を守る「パトロール隊」と「戦闘隊」

私たちの体を異常にさらさないよう出来上がっている免疫システムは、体外から侵入する病原菌、体内で発生する異常細胞を見つけて「防御」したり「攻撃」したりするチームによって構成されています。

私たち自身が気づかないところで働いてくれている免疫は、実に緻密で驚きすら覚えます。

免疫細胞の種類免疫の仕組み

では、免疫システムを構成する免疫細胞の「構成メンバー」を見てみましょう。「防御」「攻撃」そして「司令塔」と素晴らしい連携をとっていることがわかります。この免疫のおかげで、ちょっとしたケガや病気に負けずにいられます。

白血球 単球

  • マクロファージ

    アメーバのような印象のマクロファージは、体内で異物を発見すると非特異的に自らの中に取り込み、食べる性質を持っています(貪食処理・どんしょくしょり)。処理するだけでなく、一部のマクロファージは抗原(異物の特徴)を自分の表面に発し、他の免疫細胞に伝達しています。他の免疫細胞を活性化させるサイトカインという物質を生み出す活動に参加することもあります。不審者を押さえ込みながら「警察を呼んでくれ」と叫んでいる勇気ある人、といったイメージでしょうか。

  • 樹状細胞

    皮膚や鼻の粘膜、肺や胃腸といった、異物が入り込みやすい場所に存在する免疫細胞に、樹状細胞があります。樹状細胞もまた、自分の中に異物を取り込みますが、敵の情報を分析するためです。抗原(異物の特徴)を細部にわたり調べた後、リンパ節などへ移動、他の免疫細胞に「手配書」のような情報を発信します。この情報は単なる指示書という役目のみならず、T細胞やB細胞の活性化も実現します。テロリスト情報を分析し兵士に伝達、攻撃に備えさせる司令官の役割で、抗原の提示力が最も高い細胞とされています。

白血球 リンパ球

  • T細胞

    T細胞は、ウイルスに感染した細胞など異常を来たした細胞を排除する役割を担います。T細胞は以下の3つの種類に分類されます。

    キラーT細胞 樹状細胞から情報を得たキラーT細胞は、示された情報にのっとり異常な情報を持つ細胞を攻撃します。キラーT細胞という名があらわすとおり、攻撃が得意な細胞です。

    ヘルパーT細胞 ヘルパーT細胞は、樹状細胞から得た異物情報をもとに、キラーT細胞やNK細胞に向けて詳細な攻撃指令を出します。マクロファージとともにサイトカイン(細胞同士が連携するための情報伝達物質)を作り、抗体を作るようB細胞にも指示を出します。司令塔から指示を受けた小隊長が、現場の状況や兵士の状態をも加味しつつ、より細かな指示を出す働きに似ています。

    制御性T細胞(サプレッサーT細胞) 異物をある程度抑圧できたとき、もしくは正常な細胞まで攻撃をしてしまいそうになったときには、キラーT細胞の動きを抑制する必要があります。この役目を担うのが抑制性T細胞です。

  • B細胞

    B細胞は、ヘルパーT細胞からの依頼により抗原に対応した抗体を生み出します。B細胞は、病原体を認識する仕組みを持っており、そこへ付着したものを取り込んで噛み砕き、破片を抗原として表面に出します。同じ抗原を追いかけているT細胞と合流すると、お互いに刺激しあって抗体を作り出します。また、病原体に反応したことのあるB細胞の一部は体内に残り、後に同じ病に見舞われたときスピーディに抗体を作成します。「免疫がある」「免疫がつく」といわれる状態です。

  • NK細胞

    NKとは、「ナチュラルキラー」の略。自らが異物と察すると、強力な殺傷力で攻撃をしかけます。常に体内をパトロールしていること、他の細胞からの指示を必要としないところから、生まれつきの殺し屋と呼ばれています。白血球の15~20%を占めるもので、サイトカイン(免疫細胞同士の情報交換に使用される物質)を受け取るとさらに活性化されるという特徴を持っています。

自然免疫と獲得免疫の仕組み

一言で「免疫」といっても、ヒトの体が生まれながらに持っている免疫「自然免疫」と、後に得る「獲得免疫」とがあります。

自然免疫は、マクロファージやNK細胞、樹状細胞のような「初期的な消火」を担う免疫細胞の働きを指します。体内に入り込んだ(体内で発生した)不審なものに真っ先にとりついて、攻撃や分析をはじめます。これは誰の体内にもある自然な働きであることから自然免疫と呼びます。

一方、獲得免疫は、自然免疫では「消火」しきれなかった火種に取り付く第二段目の免疫システムです。樹状細胞やマクロファージはキラーT細胞やB細胞に情報を送ります。受け取った情報により、「犯人」の特徴を覚え殺傷する免疫の動きを「獲得免疫」といいます。生来持つものではなく、経験により獲得するものであることから獲得免疫と呼ぶのです。

体液性免疫

細胞性免疫の仕組み

免疫にはさらに「体液性免疫」と「細胞性免疫」とに分かれます。

体液性免疫とは、抗体と抗原が反応することによっておこります。B細胞は、ヘルパーT細胞からの指示により抗体生産細胞となり抗体を作成、体液に送り込みその情報を全身に伝えます。ここで重要なのは「抗体が発生している」ことです。

細胞性免疫とは、細胞が抗原に直接反応することを指します。重度のやけどを負ったとき、自分の皮膚をやけど部分に移植することがありますが、このとき拒絶反応は起こりません。ですが他の人の臓器を移植したときに、多少なりとも拒否反応を示します。これは「抗体」なくしておこる反応で、これを細胞性免疫と呼びます。

がんと戦う免疫の仕組み

がん細胞とは

人の細胞は、日々生まれ、そして死に落ち、常に新しいものへと入れ替わっています。そのなかで、DNA情報が傷つき“自分はどの臓器になるべきか”を見失い、無秩序な細胞分裂を続けてしまう細胞が「がん細胞」です。

ヒトの体内にありながらも残念なことに「異物」となってしまったがん細胞。がん細胞が生み出される原因は、ストレスや加齢とされています。がん細胞が増え続ければ、正常な細胞の居場所をも奪ってしまい、体調不良から死に至ってしまいます。

がん細胞に対する免疫の働き

若く健康な人の体内にも、異常な細胞が発生することは珍しいことではありません。ですが、それらがん細胞を体内に抱えていても、「がんという病気」とならない人と「がんと診断されてしまった人」に分かれるのはどうしてでしょう。

これは、免疫が他の流行性の病気のみならず、がん細胞に対しても攻撃を仕掛け殺傷しているからです。生来の殺し屋と称されるNK細胞は、常に体内をパトロールし異常を見つけると即座に攻撃します。少数のがん細胞であればNK細胞がほぼ破壊しつくすこともあります。NK細胞でも押さえ込めないほど数が増えてしまえば、他の免疫細胞が動き出し本格的な戦争を始めます。

このようながん細胞と免疫のパワーバランスで、「がんになる人・がんと診断されない人」に分かれていくとされています。