近年がん治療において注目されている免疫チェックポイント阻害薬のひとつ・テセントリク。その働きから「抗PD-L1抗体」と呼ばれており、T細胞の活性を増強することによりがん細胞の増殖を抑えると考えられています。この記事では、テセントリクの概要からその特徴、注意すべき副作用などさまざまな観点からこの薬についてご紹介します。
一般名称 | アテゾリズマブ |
---|---|
形状 | 注射剤 |
分類 | 免疫チェックポイント阻害薬 |
商品名・薬価 |
|
適応する症状(テセントリク点滴静注840mgの場合) |
|
適応する症状(テセントリク点滴静注1200mgの場合) |
|
テセントリクは「抗PD-L1抗体」と呼ばれている治療薬です。これまでの抗がん剤のように直接がん細胞を攻撃するのではなく、がん細胞から免疫細胞へのブレーキがかからないようにすることで、免疫細胞が本来持っている攻撃力を取り戻すという点が大きな特徴と言えるでしょう。
がん細胞は、異物を攻撃する働きを持つ免疫細胞(T細胞)の働きにブレーキをかける仕組みとして、「PD-L1」と呼ばれる物質をがん細胞の表面に出すことができます。このPD-L1がT細胞の表面にある「PD-1」と呼ばれる物質に結合すると、免疫細胞の働きにブレーキがかかり、がん細胞を攻撃することができなくなります。
テセントリクを投与すると、がん細胞の表面に出ているPD-L1に結合し、がん細胞から免疫細胞の働きにブレーキがかからないようにします。このことによって、T細胞は本来持っている攻撃力を取り戻すことができ、がん細胞を再び攻撃できるようになります。
テセントリクは、ロシュグループによって開発され、日本における開発は中外製薬株式会社が行っています。
テセントリクは抗PD-L1抗体として日本では初めて、非小細胞肺がん(2次治療)への適応で2018年1月に承認を取得し、2018年12月には、1次治療に対する化学療法との併用療法が承認されています。この場合に併用される化学療法はカルボプラチン・パクリタキセル・ベバシズマブとなります。
さらに、2019年8月には進展型小細胞がん、2019年9月にはトリプルネガティブ乳がんへの適応拡大が承認されています。
テセントリクは点滴により投与されます。テセントリク投与に必要な時間は30〜60分ですが、1回目の点滴は60分かけて行い、その際に副作用が見られない場合には、2回目以降の点滴については30分間で行うことが可能です。 また、投与量や投与間隔はどのがんに対して使用するかによって異なります。
●化学療法未治療の扁平上皮がんを除く切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの場合
カルボプラチン、パクリタキセルおよびアバスチンとの併用において、通常成人にはテセントリク1回1200mgを3週間の間隔で点滴静注します。
●化学療法既治療の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの場合
通常成人にはテセントリク1回1200mgを3週間の間隔で点滴静注します。
●進展型小細胞肺がんの場合
カルボプラチンおよびエトポシドとの併用において、通常成人にはテセントリク1回1200mgを3週間の間隔で点滴静注します。
●PD-L1陽性のホルモン受容体陰性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がんの場合
パクリタキセルとの併用において、通常成人にはテセントリク1回840mgを2週間の間隔で点滴静注します。
テセントリク単体で治療を行うケースもありますが、中には他の作用を持つ薬と組み合わせる併用療法が選択される場合もあります。
例えば非小細胞肺がんとの併用療法においては、テセントリクに加えアバスチン、パクリタキセル、カルボプラチンを併用、小細胞肺がんの併用療法においてはテセントリクに加えカルボプラチンとエトポシドが併用されることがあります。また、全身薬物療法を受けていない切除不能な局所進行または転移性トリプルネガティブ乳がんの治療の場合にはテセントリクにパクリタキセルの併用が選択される場合があります。
併用療法で用いられるアバスチンは、がん細胞に栄養や酸素を届けるために必要な新しい血管ができる過程を阻害することでがんの成長を妨げる働きを持つ薬です。また、パクリタキセルとカルボチン、エトポシドは化学療法に用いられ、がん細胞を死滅させたり増殖を抑える働きを持つ抗がん剤です。ただし、併用される薬の種類に関しては体の状態によって医師の判断で異なる場合があります。
テセントリクを投与することによる免疫の過剰反応が原因と考えられる副作用が起こることがあります。テセントリク投与の際によく見られる副作用は「疲労、悪心(吐き気)、食欲減退、無力症(力がうまく入らない)、発熱、下痢、発疹、そう痒症(かゆみ)」が挙げられます。
どのような症状が出るか、そしてその程度は人によって異なりますが、いずれにしても状態をよく確認し、異常がある場合には早急に対処を行います。また、テセントリクを投与している間だけではなく、投与後にも重篤な副作用が起こるケースもあるため、投与が終了した後も状態を十分に観察することが必要です。
テセントリクを投与するにあたり起こる可能性がある重大な副作用について、下記の表にまとめています。気になる症状がある場合には、早急に医師や看護師、薬剤師などに相談し、適切な処置を受ける必要があります。
間質性肺疾患 | 間質性肺疾患(2.1%)があらわれることがあります。間質性肺炎は肺胞やその周辺組織に炎症が起こり、酸素を取り込めなくなる病気です。 |
---|---|
肝機能障害、肝炎 | AST(GOT)の増加(4.4%)、ALT(GPT)の増加(4.8%)、Al-Pの増加(1.5%)、γ-GTPの増加(0.5%)、ビリルビンの増加(0.5%)などを伴う肝機能障害、肝炎(0.8%)があらわれることがあります。 |
大腸炎、重度の下痢 | 大腸炎(1.2%)、重度の下痢(1.3%)があらわれることがあります。 |
膵炎 | 膵炎(0.1%)があらわれることがあります。 |
1型糖尿病 | 1型糖尿病(0.1%)があらわれ、糖尿病性ケトアシドーシスに至るおそれがあります。症状によってはインスリン注射による治療が必要です。 |
甲状腺機能障害 | 甲状腺機能低下症(7.8%)、甲状腺機能亢進症(2.9%)、甲状腺炎(0.8%)などの甲状腺機能障害があらわれることがあります。 |
副腎機能障害 | 副腎機能不全(0.2%)、急性副腎皮質機能不全(0.1%)などの副腎機能障害があらわれることがあります。 |
下垂体機能障害 | 下垂体炎(0.2%)などの下垂体機能障害があらわれることがあります。 |
脳炎、髄膜炎 | 脳炎(0.1%)、髄膜炎(0.2%)があらわれることがあります。髄膜とは、脳や脊髄を覆っている膜のことです。 |
神経障害 | 末梢性ニューロパチー(3.7%)、多発ニューロパチー(0.4%)、ギラン・バレー症候群(0.2%)などの神経障害があらわれることがあります。症状が酷い場合は、食べ物を飲み込みにくい、呼吸が苦しくなるケースもみられます。 |
重症筋無力症 | 重症筋無力症(頻度不明)があらわれることがあります。また、重症筋無力症によるクリーゼのため急速に呼吸不全が進行することがあります。神経から筋肉に信号がうまく伝わらなくなるために起こります。 |
重度の皮膚障害 | 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(頻度不明)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(頻度不明)、多形紅斑(0.2%)などの重度の皮膚障害があらわれることがあります。発熱を伴うこともあります。 |
腎機能障害 | 腎臓に炎症が起こり、機能が低下することによって急性腎障害(0.4%)、腎不全(0.3%)、尿細管間質性腎炎(0.2%)、自己免疫性腎炎(0.1%)などの腎機能障害があらわれることがあります。 |
筋炎、横紋筋融解症 | 筋炎(0.1%)、横紋筋融解症(0.1%)があらわれることがあります。筋肉の細胞が壊れることにより、痛みを感じたり力が入らなくなるという症状があらわれます。 |
心筋炎 | 心筋炎(頻度不明)があらわれることがあります。 |
インフュージョンリアクション | アナフィラキシーを含むインフュージョンリアクション(1.7%)があらわれることがあります。点滴中または投与後にあらわれる、アレルギーのような症状のことです。1回目の投与の際にあらわれることが多くみられますが、2回目以降にあらわれる場合もあります。 |
発熱性好中球減少症 | 本剤とカルボプラチン、パクリタキセルおよびベバシズマブ(遺伝子組換え)との併用において、発熱性好中球減少症(2.8%)があらわれることがあります。白血球や好中球が減少することで、37.5℃以上に発熱した状態です。 |
抗PD-L1抗体であるテセントリクは全ての人に投与ができるわけではなく、ケースによっては投与ができない、投与を行うにあたって慎重な判断が必要な場合もあります。ここでは、テセントリクを使用する上での注意点をご紹介します。
テセントリクの投与に関しては、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」には投与できない、とされています。そのため、これまでにテセントリクに含まれる成分でかゆみや発疹など、アレルギー症状が出たことがある人については投与することができません。
下記に当てはまる患者の場合は、テセントリクの投与にあたって慎重に検討を行う必要があります。
●自己免疫疾患がある患者、または慢性的もしくは再発性の自己免疫疾患にかかったことがある患者
自己免疫疾患とは、免疫細胞が正常な細胞を攻撃してしまう病気のことです。テセントリクを投与した場合、自己免疫疾患の症状があらわれる、または自己免疫疾患の症状が悪化するおそれがあります。
●間質性肺疾患のある患者、または間質性肺疾患にかかったことがある患者
間質性肺疾患とは、肺胞の壁や周辺に炎症が起こってしまう疾患です。このような患者にテセントリクを投与すると、間質性肺疾患の症状があらわれたり、その症状が悪化する恐れがあります。
高齢者は、一般的に生理機能が低下しているケースが多く見られるため、慎重に投与を行い、状態をよく観察する必要があります。
テセントリクを妊婦に投与した際の安全性は確立されていないため、妊娠中または妊娠の可能性がある女性に対しては、原則として投与を行いません。ただし、治療上の有益性が危険性を上回る、と判断された場合にのみ、止むを得ず投与するケースもあります。また、妊娠する可能性がある女性については、テセントリク投与中および投与が終了してから一定期間適切な方法で否認する必要があります。
さらに、授乳中の女性に投与を行う場合には、授乳を中止します。
低出生体重児や新生児、乳児、幼児、小児に対するテセントリク投与の安全性は確認されていません。
テセントリク7日目
やはり、下腹部の痛みが気になり、夕方急遽がんセンターへ。結果、やはり原因がわからない…筋肉が萎縮?してるかもだとか??不安。レントゲン、やはり進行してる。が、免疫薬は効くのに時間が掛かる為、想定内だとか…まだまだ、不安は続く。
免疫チェックポイント阻害剤テセントリク治療8クール目!
PET/CTによる画像診断はスゲーくらいに良くなっていました。ただ腫瘍マーカー値が5.6ポイント上昇の26.8ng/ml。もう底値打って上昇中なのか?腫瘍マーカー値は気にするな!画像がすべてだと!薬剤師の先生が言ってくれました。