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「焦げ」のがんに関する影響

食品を加熱した時にできる「焦げ」はあまり食べない方が良い、と昔から言われてきましたが、この焦げの中に発がん物質が含まれていることがわかってきました。がんに影響すると考えられているのは、「アクリルアミド」や「ヘテロサイクリックアミン」と呼ばれる2つの物質。これがどのようなものなのかをご紹介していきます。

食品の「焦げ」とは

近年の研究により、焦げの中には発がん物質が含まれていることがわかってきました。その物質というのが、「アクリルアミド」や「ヘテロサイクリックアミン」です。

リスクが指摘されているがんの種類

ラットにアクリルアミドを投与した実験から、オスのラットでは精巣中皮腫、甲状腺ろ胞細胞腺腫、雌のラットでは甲状腺ろ胞細胞腺腫、乳腺腫、中枢神経系の神経膠腫、口腔乳頭腫、子宮腺がん、陰核腺腺腫がアクリルアミドの容量に依存して増加したという結果が得られました。

また、ラットを用いた他の実験(アクリルアミドを強制経口投与及び腹腔内投与、またアクリルアミドを経口、経皮、腹腔内のそれぞれの経路で投与した後に、代表的な発がんプロモーターであるテトラデカノイルホルボールアセテート(TPA)を皮膚に塗布)でも、アクリルアミドの容量に応じて肺腺腫や扁平上皮がんが増加した、という結果が得られています。

このようなデータから、食べ物の焦げ(アクリルアミド)はさまざまながんに影響する可能性があると考えられます。

「焦げ」ががんに悪影響を及ぼすという科学的根拠

食品の焦げとがんの関連性については、世界中でさまざまな研究が行われています。ここでは、その研究内容の一部をご紹介します。

ヘテロサイクリックアミン類の発がん性について

食品を高温で調理したり、焦がしたりしたときに、アミノ酸や糖質、クレアチンなどが化学変化した一部の成分が、発がん性のある物質に変化することがわかっています。しかも、その成分は現時点で20種類以上が確認されており、まとめて「ヘテロサイクリックアミン類(HCAs)」と呼ばれています。ヘテロサイクリックアミンはビタミンから発がん性物質までさまざまな種類があるのが特徴で、中でも発がん性を持つヘテロサイクリックアミンは肉や魚を高温で調理することによって生成されるという特徴があります。

このヘテロサイクリックアミン類は、1970年代に日本の科学者が,魚の焦げの中から発見したもの。このことがきっかけでさまざまな研究が行われるようになったと言われています。

魚の焼け焦げ中に見出されたHCAsは,20種類以上の化合物が確認され,国際がん研究機関(IARC)では,このうちの10種に発がん性があるとし,2-アミノ-3-メチルイミダゾ[4,5-f]キノリン(IQ)をグループ2A(ヒトに対しておそらく発がん性がある),その他9種の物質を2B(ヒトに対して発がん性の可能性がある)に分類しています。これらは,一般的にIQやPhIP などと略称されます。

HCAsは,タンパク質及びアミノ酸を多く含む食品(主として肉類と魚類)を150°C以上の温度で調理したときに生成します。食品中の含有実態については,これまで燻製食品や調理した食品など,含有が予想される食品を中心に,発がん性のある10種のHCAsのいくつかについての調査が行われてきました。それらの中で食品中におけるHCAsの存在量は,一般に0.1〜数ng/g(ppb)と極めて低濃度であると報告されています。

引用元:日本食品分析センター「食品加工中に生成する有害化学物質 〜ヘテロサイクリックアミンからアクリルアミド〜」(pdf)

上記の通り、国際がん研究機構(IARC)では20種類以上あるヘテロサイクリックアミン類のうち10種類に発がん性があるとしていますが、中には「ヒトに対しておそらく発がん性がある」という「グループ2A」に分類されているものもあります。このグループ2Aに分類されているのがMeIQx(2-アミノ-3,8-ジメチルイミダゾ[4,5-f]キノキサリン)と呼ばれるものですが、これは魚や肉の焼け焦げに含まれているヘテロサイクリックアミンの一つで、日本人はMeIQxを1日0.2〜2.6μg摂取していると推定されています。

そこで,MeIQxの低用量域での肝臓における発がん性を検証するために、ラット1145匹を用いた実験が行われました。その内容とは、MeIQxを0mg/kg、0.001mg/kg、0.01mg/kg、0.1mg/kg、1mg/kg、10mg/kgの低用量域,ならびに100mg/kgの用量でそれぞれ餌に混ぜ、最大32週間連続して投与し、経過を観察するというものです。

MeIQxのラット肝臓がん発生過程における種々の発がん反応とその用量において,まずDNA付加体形成が極めて低用量からみられ,その後ある程度の無作用量域があって8-OHdG形成レベルの上昇,H-rasがん遺伝子変異,lacI遺伝子変異,およびイニシエーション活性の増加,そしてさらにある程度の無作用量域の後,前腫瘍性病変であるGST-P陽性細胞巣の発生増加がみられた.

これらの結果からすると,さらに幅広い無作用量域を持って肝臓がん発生の増加に至ることが強く推察される.実際に雄性ラットを用い,MeIQxの2年間発がん性試験を行ったところ,100mg/kgのみ肝臓がんが発生した,なお,検索した1と0.001mg/kgでGST-P陽性細胞巣の発生においても無処置対照群と差がみられなかった.このように肝臓発がんの指標である種々のマーカーにはそれぞれの無作用量域が求められ,マーカーから推察される発がん機序を考えると MeIQxの発がん性には閾値,少なくとも実際的な閾値があると結論することができる.

引用元:福島昭治、魏 民、梯アンナ、鰐渕英機「発がん物質にも閾値が存在する」(pdf)

魚や肉などの焦げに含まれているMeIQxのラット肝臓における低用量発がん性を中期発がん性試験法で検討した結果、MeIQx–DNA付加体形成は微量からみられ、より高い用量で8-hydroxy-2’-deoxyquanosine形成、lacI遺伝子変異、イニシエーション活性等が誘発されました。肝臓の前腫瘍性病変であるGST-P陽性細胞巣は、さらにより高い用量で誘発されたそうです。

また、ラットにヘテロサイクリックアミン類の一種であるPhIP(2-アミノ-1-メチル-6-フェニル-1H-イミダゾ(4,5-b)ピリジン)を含む餌を与えるという実験も行われました。これは、餌に含まれるPhIPの量と大腸がんの発がん性の関係について確認するために行われたものです。

魚,特に肉の焼け焦げに多く含まれるヘテロサイクリックであるPhIPはラット大腸に発がん性を発揮する.そこで,0.001〜400mg/kg用量域における種々の用量のPhIPの大腸発がん性をラットを用いて検討した.6週齢の雄性F344ラット約1900匹に種々の用量のPhIP含有飼料を16週間連続投与した.大腸における前腫瘍性病変の指標である変異腺か巣(ACF)の発生は10mg/kgまでは0mg/kg群と差がなく,50から400mg/kgにかけて有意な増加を示した.また,PhIP-DNA付加体形成は0.01mg/kg以上で有意に増加した.このように両者に無作用量があり,しかもそれらに大きな差がみられた.

引用元:福島昭治、魏 民、梯アンナ、鰐渕英機「発がん物質にも閾値が存在する」(pdf)

PhIPは、調理済みの肉に含まれる最も豊富なヘテロサイクリックアミンです。PhIPの形成は、温度と調理時間とともに増加し、調理方法や調理される肉の種類によっても変わってきます。

アクリルアミドの発がん性について

アクリルアミドは、炭水化物を多く含んでいる食品を高温で加熱した際に生成される物質で、さまざまな加工・加熱商品から検出されています。もともとは2002年にスウェーデンで発見された物質ですが、このアクリルアミドも国際がん研究機関(IARC)によって「ヒトに対しておそらく発がん性があるもの(グループ2A)」に分類されており、その発がん性について研究が行われています。

日本でも、農林水産省ではアクリルアミドについて下記のような見解を発表しています。

アクリルアミドが健康に与える悪影響として、神経毒性と発がん性が懸念されています。 食品安全委員会は、食品からアクリルアミドを摂取することによる日本人の健康影響について評価しました。その結果、神経への悪影響については極めてリスクは低いとする一方、発がんのリスクについては、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えないと判断し、引き続き合理的に達成可能な範囲で、できる限りアクリルアミドの低減に努める必要があると結論しています。

引用元:農林水産省「食品中のアクリルアミドに関する情報 よくある質問」

ただし、農林水産省の見解としては、むやみにアクリルアミドが含まれる食品を避けようとするのではなく、健康を維持するのに必要な栄養素を取るためにバランスの良い食生活を送ることを推奨しています。バランス良い食生活を心がけると、特定の食品のみを食べることには繋がらないため、食品から摂取するアクリルアミドの量も低く抑えることができるためです。

また、アクリルアミドを避けようとして食品を十分加熱せずに食べることも、食中毒や消化不良を起こさないために避けるべきとしています。そのため、あまり神経質にならずに、まずは「焦げ」の部分を取り除くくらいの意識を持つようにすると良いでしょう。

ちなみに、アクリルアミドは120度以上で加熱した時に発生する物質なので、煮る・蒸す・茹でるなど、水を利用した調理方法の場合はほとんど発生しません。

「焦げ」ががんに悪影響を及ぼすという意見に否定的な見解

「焦げ」の中に発がん物質があるとされているものの、「そこまで神経質になる必要はない」という見解もあります。食品の焦げによりがんを発生させるには、かなりの量を摂取することになるためです。

こげから取れた発がん物質をえさに混ぜてネズミに食べさせると、どんな種類のものでも肝がんができました。グルP1という物質を投与すると、肝がんの他に脳腫瘍や大腸がんもできました。一つの発がん物質がいろいろながんを発生させたのです。しかし、胃がんはできなかったのです。

ここで問題なのは、実験に使われた発がん物質の量。こげのなかに含まれる発がん物質は非常に少ないのです。実験では人間に換算すると、体重の四倍以上のこげ、実に焼き魚百トン以上を一年間、毎日食べる量に相当します。現実にはありえないことです。

現実の食生活に近い実験も行われました。国立衛生試験所の高橋道人博士は、魚粉を焼いて黒こげにし、ハムスターに二年間投与しました。いくつかのハムスターにがんができました。しかし、通常のえさだけ与えられたハムスターにもがんができており、差はなかったのです。

引用元:公益財団法人 広島がんセミナー「こげの発がん性」

上記の研究結果から、魚や肉の焦げには発がん物質が含まれているものの、その量は非常に少なく、普段口にしている食事ではがんを発生させることはないと指摘しています。ただし、発がん物質は体の中で蓄積される恐れもあるため、焦げた部分は避けるに越したことはないでしょう。

また、焦げに関しては魚だけでなく肉も同様。焼肉やバーベキューなどで真っ黒に焦げてしまった肉は極力食べないようにしましょう。

参考文献・参考サイト