Method 2

抗がん剤治療 Anti-cancer agent

細胞レベルのがんを効率よく攻撃する「抗がん剤」

抗がん剤療法(イメージ)

がんの三大治療法のひとつである抗がん剤治療は、血液のがんや、がんが全身に飛び火してしまったような場合、手術をした後の再発防止に用いられます。手術はがんが塊を形成しているときに有利であるのに対し、抗がん剤は全身にその治療効果が及びます。

抗がん剤は点滴や注射、飲み薬といった形態で投与されます。抗がん剤治療には、がん細胞の増殖を抑える化学療法、がん細胞の特徴を利用しがん細胞を標的にして破壊する分子標的治療、ホルモン調整によってがん細胞の増加を抑制するホルモン療法があります。がんや患者の体調に応じて、ひとつの抗がん剤を使用したり、必要に応じて複数の抗がん剤を組み合わせて使うこともあります。

抗がん剤療法では、抗がん剤を直接がん組織に注射(注入)する治療法もあります。その代表となるのが膀胱がんです。内視鏡手術の後に、抗がん剤を膀胱内に満たす術式です。他にも、がんを発症している臓器に酸素や栄養を送り込んでいる血管(動脈)にカテーテルを挿入し、ダイレクトに抗がん剤を送り込む仕掛けを作ることもあります。これは「動注」という手法です。

抗がん剤は他の治療法(手術や放射線治療)と組み合わせずに抗がん剤単独でがん治療を行うこともあり、ごく初期から重症化したときに至るまで使われる治療法ですが、効果が見られなくなる(耐性ができる)時期を迎えてしまうことも珍しくありません。このため、経過を観察しながら抗がん剤の変更を行っていく必要があります。

がんの種類にもよりますが、基本的に抗がん剤はかなり高価です。抗がん剤治療では、その高価な薬を毎日飲んだり点滴したりすることになります。月々の負担が10万円を超えるケースも珍しくはありません。国が承認した抗がん剤治療をする分においては、健康保険の利用で3割負担(もしくは1割負担)で済みます。また一定額以上の負担をしなくてもよい「高額医療費制度」という制度もあります。がんと診断されたら、健康保険を取り扱う窓口へ行き、限度額適用認定証を取得しておきましょう。

アイコン 抗がん剤治療の種類

抗がん剤といわれる薬剤は、その働き方によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を見てみましょう。

  • 分子標的薬

    がん細胞独特の性質を利用し、がん細胞の増殖を防いだり死滅させたりする効果があります。薬の製造の段階からがん細胞のもつ分子(標的)の狙い撃ちを目的としており、細胞の増殖を阻害することが分子標的薬の特徴です。

    ・ゲフィチニブ(イレッサ)

    ・セツキシマブ(アービタックス)

    ・トラスツズマブ(ハーセプチン)

    ・ベバシズマブ(アバスチン)

    ・ラパチニブ(タイケルブ)

    ・リツキシマブ(リツキサン)

  • アルキル化剤

    抗がん剤の中でも歴史の古いものがこのアルキル化剤です。そもそも化学兵器として開発されたマスタードガスの技術を応用しているだけあって、一定の効果を見込めるものの、その副作用も強いことで知られています。細胞が増殖する際に必要なDNAの“コピー機能”を邪魔することで、がん細胞の増殖をさせないのがアルキル化剤の効果の仕組みです。白血病・悪性リンパ腫で効果が確認されています。

    ・シクロホスファミド(エンドキサン)

    ・テモゾロミド(テモダール)

    ・ニムスチン(ニドラン)

    ・プロカルバジン(塩酸プロカルバジン)

  • 代謝拮抗剤

    細胞が分裂し、増殖するときにはタンパク質が必須です。この代謝作用を阻害することで、細胞の成長や細胞分裂を妨害し、がん細胞の増殖を防ぐのが代謝拮抗剤です。健康な細胞にも影響を及ぼしはしますが、がん細胞の分裂サイクルは特に長いので、がん細胞により多く不利益な状況をもたらします。単独での使用より、他の抗がん剤と組み合わせることで、より高い効果が得られるとされています。

    ・エノシタビン(サンラビン)

    ・クラドリビン(ロイスタチン)

    ・シタラビン(キロサイド)

    ・ドキシフルリジン(フルツロン)

    ・ヒドロキシカルバミド(ハイドレア)

  • 植物アルカロイド

    植物から取り出したアルカロイドを使用し、細胞への影響をもくろむのが「植物アルカロイド」です。植物のもつ有毒物質を用いたものを植物アルカロイドと呼びますが、この働き方にはいくつかあります。細胞分裂を起こすときに重要な微小管に作用させ染色体を運ばせないもの、微小管に異常を起こさせるもの、DNAと深いかかわりを持つ酵素の働きを阻害するものなどがあります。

    ・エリブリン(ハラヴェン)

    ・ドセタキセル(タキソテール)

    ・ノギテカン(ハイカムチン)

    ・パクリタキセル注射剤(アブラキサン)

    ・ビンデシン(フィルデシン)

  • 抗がん性抗生物質

    抗生物質といえば、細菌の増殖を防ぐ薬品として重症化した風邪の時にも処方されることで知られています。抗がん作用もあるのでは、という研究から生まれたのが抗がん性抗生物質で、微生物から抽出したアクチノマイシンDがはしりとされています。細胞分裂の際のDNA合成を邪魔したり、細胞分裂時に必要な酵素の働きを妨害するなどして、がん細胞の増殖を抑えます。副作用が強いとされる抗がん剤は抗がん性抗生物質であることが多く、吐き気に対しては吐き気止めを使用し対処します。

    ・アクラルビシン(アクラシノン)

    ・イダルビシン(イダマイシン)

    ・ジノスタチンスチマラマー(スマンクス)

    ・ペプロマイシン(ペプレオ)

    ・マイトマイシンC(マイトマイシン)

  • プラチナ製剤

    貴金属として知られるプラチナは、アンモニアなどの物質と結合させると、細胞DNAの塩基と結びつくことがわかっています。こうなるとがん細胞は正常な分裂ができなくなります。DNAを構成する4種の塩基のうち、ふたつに結合して、正常なDNAを作れなくするのです。とはいえ、がん細胞以外の正常な細胞にも影響しますので、副作用もあります。吐き気も多く起こり、白血球や血小板が減少することもあります。

    ・ネダプラチン(アクプラ)<

    ・オキサリプラチン(エルプラット)

    ・カルボプラチン(カルボプラチン・パラプラチン)

  • ホルモン剤

    女性特有の乳がんは女性ホルモンが、男性特有の前立腺がんには男性ホルモンが大きく影響していることは広く知られています。このようにホルモンの影響を大きく受けるがんには、相反するホルモンを投与することでよい効果を得ることができます。特に乳がんにはこのホルモン剤の働きが効果を発揮するケースが多く、よく取り入れられます。

    ・アナストロゾール(アリミデックス)

    ・エチニルエストラジオール(プロセキソール)

    ・ゴセレリン(ゾラデックス)

    ・ビカルタミド(カソデックス)

    ・ホスフェストロール(ホンバン)

    ・メピチオスタン(チオデロン)

アイコン 抗がん剤治療の問題点

がんの3大治療法のうち、がん細胞ひとつひとつを追う役目を果たすのが抗がん剤ですが、諸刃の剣の面があります。

  • Problem 1
    抗がん剤で完治はできない

    がん細胞一つひとつを追う抗がん剤は、とても効率のよい治療法のように見えます。ですが、人により副作用が大きく出ることも知られています。呼吸困難、肝臓機能の低下、腎不全、白血球の減少など生命に直接影響を及ぼすものもあります。がん細胞が抗がん剤に対する耐性を持ってしまうケースもあり、完治に至るまでの長期間において常に使い続けることはできない治療法といわざるを得ません。言い換えれば、抗がん剤でがんを完治させることはできないのです。

  • Problem 2
    抗がん剤の強い副作用

    どなたもが知っている抗がん剤の副作用。中には恐怖心すら覚える人もいるでしょう。仮に生命の危機は感じなくとも、吐き気、白血球の減少、倦怠感、脱毛などが生じてしまえば、「軽い抗がん剤ですから」といわれても、通院治療が可能となっても、生活の質はみるみる低下してしまいます。これらの副作用は健康な細胞にも影響してしまう抗がん剤の悪い面があらわれているのです。抗がん剤の副作用の中で主なものと、それに対する対策についてご説明します。

    脱毛

    正常な細胞にも影響を与える抗がん剤は、脱毛を引き起こしてしまいます。髪などの体毛の一番奥深くにある毛球が抗がん剤の影響を受けてしまうと、抜け落ちていきます。特に今ある髪は、80%程度が細胞分裂の活発な成長期にあります。抗がん剤により抜け落ち始めると、残り20%以外は少なからず何らかのダメージを受けることになります。治療が始まる前にすっきりとカットしておくこと、治療が始まり脱毛が目立ってきたらウイッグやバンダナ、キャップなどでカバーするようにします。

    吐き気

    抗がん剤治療がスタートしてから早い段階で経験する副作用のなかに、吐き気や嘔吐があります。これは中枢神経が抗がん剤の影響を受けやすいという性質を持っているからです。血中の科学的物質の影響を受けると、それを体外に排出しようとするいわば自然な反応。一度それを経験すると、次の抗がん剤治療のときに「また気分が悪くなるのではないか」という心理的な圧力を感じてしまうケースさえあります。吐き気止めや向精神薬を適切に使用し、症状の軽減をはかります。

    骨髄抑制(白血球や赤血球、血小板などの減少)

    抗がん剤治療が始まって、早ければ1週間頃から「骨髄抑制」が見られるようになります。体感する副作用ではなく、血液検査によりわかる副作用です。よく知られている副作用の中でも特に重大で、白血球や赤血球、血小板が減少してしまうのが骨髄抑制です。白血球が減ってしまえば免疫機構が大きく崩れて行き、感染症に抵抗できない身体となってしまいます。赤血球が減少すれば、体中に酸素を送る機能が低下してしまいます。血小板が減れば止血の仕組みが弱くなり、ちょっとしたケガでも血が止まらなくなります。これらの数値が極端に悪いときは入院する必要があります。また、通院治療を許可されていても、清潔に心がけたり、怪我をしないように注意をしたりなど、特段の配慮が必要です。

  • Problem 3
    副作用に耐えうる最大投与量が標準

    抗がん剤の投与の量はどのように決定されているのでしょうか。そもそも、副作用に耐えられる最大量から、個人の体格(身長や体重)を加味したものが各個人への投与量とされているのです。そこでは個人の体質(薬剤を分解する能力)は考慮されてませんので、「副作用は個人差が大きい」、ということになるのです。ときに、血液や免疫細胞を生み出す骨髄に深刻なダメージを与えることもある抗がん剤治療。強力な薬は毒にもなることがわかります。

抗がん剤治療に加えて考慮すべき
第4のがん治療「免疫療法」

抗がん剤は、がん細胞を追いかけて増殖させなくする強力な武器ではあります。それでいて健康な細胞をも傷つけてしまい、ひどいときには生命維持の根幹である血液製造能力を壊してしまうこともあるのです。強力なものを望まない人が多いのも当たり前です。

そこで今、自分自身の免疫能力を落とさずにパワーアップさせることができる免疫療法が、第4のがん治療として注目されているのはご存知でしょうか。抗がん剤と併用すれば、抗がん剤の効き目を得ながら、QOL(生活の質)を維持しつつがん治療を継続することも夢ではありません。

さらにいうなら、抗がん剤の働きをさらに引き出す可能性も期待できるのが、免疫療法なのです。

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