3 リンパ球免疫療法CTL療法

がんの特徴を教え込み攻撃指令をかける「CTL療法」

CTLとは

CTL(細胞傷害性T細胞、キラーT細胞)とは、リンパ球の一種で、ヘルパーT細胞から得た情報にのっとり、感染した細胞や異物(がん細胞)を攻撃し、死滅させる役目を担います。

T細胞には様々な種類があり、ヘルパーT細胞、サプレッサー(制御性)T細胞、そしてこのCTLに分けられ、攻撃を専門に行うのがCTLです。ヘルパーT細胞から受け取るサイトカインによって細胞分化するという特徴を持っており、攻撃性が増すことがわかっています。がん細胞の目印を学習した上で攻撃をしますから、他の健康な細胞には見向きもせずひたすらがん細胞を攻撃するという特徴があります。

一方で、ヘルパーT細胞からの情報が来ない限りは全く働かないという面も持ち合わせています。

CTL療法とは

攻撃性の高いT細胞に特殊な戦闘教育を施し、患者の体内に送り込むと例えればイメージしていただきやすいと思います。攻撃すべき相手の特徴を教え込み、戦士として鍛え上げると表現できるでしょう。

患者の体内からT細胞とがん細胞を取り出し、がん細胞が増殖しないよう操作した上で共に培養します。特定のサインを覚えたキラーT細胞は、がん細胞のみを攻撃する細胞傷害性T細胞として増殖します。それを患者に投与するのがCTL療法です。

最大の問題は、培養の段階で患者個人のがん細胞が必要となることです。胸水や腹水などから生検サンプルが手に入らなければ、CTLに退治すべきがんの特徴を教え込むことができないからです。

治療の流れ

患者の血液からリンパ球を取り出します。患者の腹水や胸水から取り出したがん細胞に、それ以上増殖しないような処理をしたのち、リンパ球と引き合わせます。ここでリンパ球への刺激が始まり、T細胞ががん細胞の情報を覚え始めます。さらにそこへ、抗CD3抗体とIL-2を加え培養することで、患者のがん細胞を見分けて攻撃するCTLが出来上がります。患者独自のCTLを患者へ投与、これが基本的な治療の流れです。

血液を専用の機械に通してリンパ球を分離採取しなければならず、前処置・止血をあわせると1回につき3時間近くベッドに横になるのが一般的です。充分な量のがん細胞を培養するには時間がかかることがあります。

効果効能

ただやみくもに免疫力を上げるという免疫療法とは違い、がん細胞の情報を示すことで攻撃力の高い細胞に「敵(がん細胞)」を教え、集中的に狙い撃ちするという治療法です。免疫力を上げるだけの免疫療法よりも格段に高い治療効果を狙うものです。

ちなみに、このCTL療法とは、免疫療法の第四世代とされており、1990年代に開発されました。

CTL療法の注意点

CTL療法は、CTL(細胞傷害性T細胞、キラーT細胞)に「特定のがん細胞の情報を覚えさせ、ターゲットを決めて攻撃をさせる」ことを目的としているため、注意点や制約がいくつかあります。

適切な標的入手が必要

CTL(細胞傷害性T細胞、キラーT細胞)に正しいがんの情報を与えるために、手術や検査の際に胸水・腹水などから、生きたがん細胞を取り出せることが必要です。がん細胞が死んでしまっている場合、情報が変化してしおり、患者のがんにマッチしたCTLを作ることができません。

このことから、患者の体内から取り出したフレッシュながん細胞を、担当医師が提供することに納得しているというのも重要なポイントです。この手順を踏むことができなければがん情報を得ることはできず、CTLを患者のがんに反応させることができないのです。

CTL細胞療法には、標的となる生きたがん細胞の確保が何より重要です。もしもがん細胞が手に入らなければ、CTL療法はあきらめざるを得ません。

大量のキラーT細胞採取が重要

キラーT細胞が標的となるべきものの情報を覚えるのはごく限られた期間のみです。活動するだけの体力を得たのちで、なおかつ大人になりきる前の若々しい状況でなければ学習をしないと言われています。また、その若い細胞も、血液から取り出したばかりのフレッシュなものでなければなりません。

若々しい細胞であること、更に取り出したばかりのものでなければならないという条件を考え合わせれば、その総数はかなり限定的であることはすぐにわかります。特殊な医療機器でリンパ球分離採取を行い、キラーT細胞のもとであるT細胞を大量に得ることが大前提となり、時間と体力が必要な治療法ともいえます。

がん細胞の変化などに対応できない

CTL療法がときにヒットしないこともありますが、これには以下の理由があります。

覚えこませた後にがんの情報が変化してしまう可能性

がん細胞が、免疫細胞の網の目をくぐるために性質を変化させることはよく知られています。特定のがん細胞に攻撃を仕掛けるよう覚え込ませたCTLは、質の変わったがん細胞を見逃してしまいます。

転移するときには必ず情報が変化する

転移してしまったがん細胞は、元の情報のままではありません。これもまた、CTLががん細胞を見落としてしまう原因です。ひとつのCTLは、ひとつのがん情報しか覚えられないため、転移してしまったがん細胞を見つけることができません。

ひとつのがん細胞情報しか学べない

同じがん組織内であっても、複数のがん細胞が存在することもありうる話です。T細胞は、ひとつの情報しか学ぶことができません。例えば、CTLを3つのグループに分け、A・B・Cと3種類のがん情報を覚えこませる手間をかけても、がんの変質や転移でそれ以外のがん情報を呈するようになっても、A・B・Cのがん細胞しか死滅させることができないのです。殺されなかったがん細胞は増殖をはじめることでしょう。たとえA・B・Cの3種類のがん細胞情報が正しく、それに対応できるCTLを作ったとしても、即戦力となれるキラーT細胞の数は3分の1となり、絶対数が減ってしまうことになります。

CTL療法とあわせて知っておきたい
免疫チェックポイント阻害剤について
Future

CTL療法は、免疫細胞療法のなかでも特段に攻撃性の高い治療法です。しかしながら、がん細胞の変質のリスクなどでやや難易度が高いとも言われています。

がん細胞には、CTLに殺されないようにするために、CTLの活性を下げてしまう「免疫チェックポイント」という仕組みがあります。そこで注目されているのは、「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれるものです。

がん細胞が免疫細胞の動きを封じてしまう行動に着目し、その免疫チェックポイントを阻害する薬(免疫チェックポイント阻害剤)を使うことで、CTLが再度活発に動き出すようになり、がん細胞を殺傷することができるわけです。