大豆はがんに効く?研究データを詳しく解説

がん治療にプラス免疫~免疫療法のすべて~

これから癌を克服していこうとする人たちへ

がんの3大治療と免疫療法の関係

閉じるボタン

免疫療法のすべて » がんに効く食べ物 » 大豆
  

大豆はがんに効く?

日本人の食生活に欠かせない大豆。味噌、納豆、豆腐など、多くの人が毎日のように口にしているのではないでしょうか。大豆を食べる習慣は日本人の長寿と関連していると考えられており、さまざまな研究が行われています。特に、大豆に含まれる「大豆イソフラボン」には大きな注目が集まっており、がんの発生リスクを下げるという報告もあります。そこで、いくつかの研究データをもとに、大豆とがんの関係について見ていくことにしましょう。

大豆とは

大豆の原産地は中国であり、日本に渡ってきたのは弥生時代だと考えられています。その後、奈良時代に入ってから味噌や醤油への加工方法が伝わってきたという説が一般的です。ただし、日本で広く栽培されるようになったのは鎌倉時代以降。栄養食・保存食としても重宝されるようになりました。

近年注目されているのが、大豆に含まれる「大豆イソフラボン」という成分。大豆イソフラボンとは、「植物エストロゲン」と言われているもののひとつです。大豆イソフラボンが持つ化学構造は女性ホルモンであるエストロゲンと類似しているということが知られており、イソフラボンがエストロゲン受容体と結合することで、さまざまな作用を発揮すると言われています。

大豆ががんに効果的とする科学的根拠

日本は世界有数の長寿国であり、その中でも乳がんや前立腺がんの発生率が少ないという特徴があります。その要因として、日本人特有の食生活が注目されています。

大豆食品(豆腐、納豆、味噌等)については低脂肪であり、植物性たん白質、カルシウム等の栄養素に富む食品として、日本人の食事の健康的な因子となっていると考えられてきた。

日本においては、これまで、大豆イソフラボンを含む多種多様な大豆食品が日常的に摂取され、日本人は一般的な大豆食品の食経験を有している。言い換えると、大豆食品に含まれる大豆イソフラボンについても食経験を有しているといえる。こ れら大豆食品の摂取に関し、安全性について特別の問題が提起されたことはない

引用元:大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(pdf)

大豆の有効性を示唆する研究

公益財団法人がん研究会と大豆エナジー株式会社の共同研究のデータは、大豆から得られた「グリセオリンI」と呼ばれる天然分子化合物が、再発乳がんの新たな治療薬開発につながる可能性を示唆しています。

大量の大豆を多様な植物生理活性物質(フィトアレキシン)を誘導するようにストレス刺激処理してからすり潰し、抽出液を分画して抵抗性乳がん細胞に加えたところ、一部の画分の添加によって、エレノアとESR1の転写が抑制され、細胞の増殖が抑えられました。この画分を、NMR(核磁気共鳴分光法)と TOF-MS(質量分析法)により解析したところ、大豆の二次代謝物質であるグリセオリンIが活性成分であることがわかりました。グリセオリンIは、レスベラトロールよりも効果的に治療抵抗性乳がん細胞の増殖を抑え、また、正常線維芽細胞よりも強く抵抗性乳がん細胞の増殖を阻害し、細胞死(アポトーシス)を誘導しました。

引用元:【プレスリリース】大豆グリセオリン I が再発乳がんモデル細胞の増殖を抑える -エストロゲン療法に関わる新たなメカニズムを解明-

また、国立がん研究センターでは、大豆製品・イソフラボン摂取量と前立腺がんの発生リスクについて調査を行っています。

対象となっているのは40〜69歳の男性約43,000人。食生活に関する詳しいアンケート調査を実施し、大豆製品・イソフラボン摂取量にと前立腺がんリスクとの関連を調べたものです。

対象者のうち、307人が前立腺がんになりました。みそ汁、大豆製品(豆腐・納豆・油揚げなど)、食事摂取頻度アンケートから算出したイソフラボン(ゲニステインまたはダイゼイン)の摂取量によってそれぞれ4つのグループに分けて、最も少ないグループに比べその他のグループで前立腺がんのリスクが何倍になるかを調べました。その結果、いずれについても、前立腺がんリスクとの関連がみられませんでした。

引用元:大豆製品・イソフラボン摂取量と前立腺がんとの関連について

また、前立腺がんを「限局がん(前立腺内に留まるがん)」と「進行がん」に分けて比較を行ったところ、限局がんにおいては、大豆製品や大豆イソフラボン(ゲニステイン・ダイゼイン)の摂取量が多いほどリスクが低下する、といった結果も見られています。進行がんについては、みそ汁を多く摂取したグループで高くなったものの、進行がんを発症した人が少ないため、偶然である可能性も考えられています。

また、国立がん研究センターでは、乳がんとの関連についての調査も行っています。対象は40〜59歳の女性約2万人。10年間の追跡調査の中で、大豆製品・イソフラボンの摂取量と乳がんの発生率の関係を調べています。

アンケートの「みそ汁」、「大豆、豆腐、油揚、納豆」の項目を用いて大豆製品の摂取量を把握し、その後に発生した乳がんとの関連を調べました。図の縦軸は乳がんのなりやすさを示しています。食べる量の一番少ない人をとして、それ以上食べる人が何倍乳がんになりやすいかを示しました。たとえば1日3杯以上みそ汁を飲む人達で乳がんの発生率が0.6倍、つまり40%減少しているということになります。これらの値は、乳がんに関連する他の因子(初潮年齢や妊娠回数など)の影響を取り除いて計算しています。「大豆、豆腐、油揚、納豆」では、はっきりとした関連が見られませんでしたが、「みそ汁」ではたくさん飲めば飲むほど乳がんになりにくい傾向が見られました。

引用元:大豆・イソフラボン摂取と乳がん発生率との関係について

また、この研究では閉経との関係も調査しています。アンケート時に閉経していたと回答した人に限ると、イソフラボンを摂取すればするほど、乳がんになりにくい傾向が顕著に見られたとのことです。

大豆の有効性を否定する見解

大豆製品やイソフラボンの摂取ががんのリスクを低下させるという研究報告がある一方、がんとの関連性は特に見られないという報告もあります。下記は、住んでいる地域を考慮に入れて調査を行ったという研究データです。

欧米女性についての結果はアジア人女性とは異なるものでした。

欧米諸国での閉経前女性を対象とした14の研究では、大豆イソフラボン摂取による乳がんリスクへの影響について統計学的に意味のある差は見られませんでした。また、閉経後女性対象の14研究では、概括的に分析した場合にはわずかながら統計学的に意味のある保護効果が示されたものの、これを研究デザイン別に分析しなおすと、意味のある保護効果は確認できなかったのです。

引用元:大豆イソフラボンは乳がんリスクを上げる? 下げる?

上記の研究では、アジア人女性であれば確かに大豆イソフラボン摂取により乳がんのリスクは減ると言えるものの、欧米の女性に関しては特に関連性が見られなかったそうです。なぜ地域による差が出るのかははっきりと示されていないものの、要因として考えられているのが大豆イソフラボンの種類や代謝物(エクオール)による影響。

エクオールができるかどうかは腸内細菌による上に、欧米人よりもアジア人の方がエクオールを作れる人が多いことが、乳がんのリスクに関連しているのかもしれません。

また、大豆イソフラボンを摂取する際には、乳がんなどエストロゲンに感受性が高いがんの発生リスクに注意すべき、という報告もあります。

ヒト乳がん細胞(MCF-7)を移植した卵巣摘出ヌードマウスにおける、ゲニステイン(混餌 125~1000μg/g)のMCF-7の成長に与える影響を検討したところ、ゲニステインは腫瘍の増大、細胞の増殖、pS2 発現を用量依存的に促進させた。

引用元:大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方(pdf)

ただし、上記の研究はマウスによる実験結果によるもの。ヒト試験に基づく研究においては、大豆イソフラボンの摂取が乳がん発症の増加に関連しているという報告はありません。

大豆の摂取方法

大豆については、豆腐や納豆、煮豆、味噌などさまざまな形で摂取できます。そのため、日常の食生活を送る上では、そのほかの食品とともにバランスよく摂取することが重要です。食品中の大豆イソフラボンについては、摂取量の上限など法的な規制は行われていませんので、常識的な範囲で摂取している上では問題ないと考えられます。

大豆を摂取する際の注意点

現時点において、一般的な大豆製品から摂取している大豆イソフラボンによる健康被害は報告されていないので、通常食品から摂取する程度の大豆イソフラボンであれば健康に影響はないと考えられます。

ただし、大豆イソフラボンを関与成分としている特定保健用食品の過剰摂取には注意すべきとされています。食品安全委員会からは、下記の通り見解が示されています。

大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」の中で、「日常の食生活に加えて、特定保健用食品により摂取する大豆イソフラボンの摂取量が、大豆イソフラボンアグリコンとして30mg/日の範囲に収まるように適切にコントロールを行うことができるのであれば、安全性上の問題はないものと考えられる。

引用元:農林水産省「大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A」

参考文献・参考サイト